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ぷかぷかと水面に浮かぶ果実を片手間に弄くり回しながら、ぼんやりと目を閉じる。
12月22日、今日は冬至。それから、終業式…所謂、学期の終わりというものである。
特段それらしい友人と呼べる存在がいるわけでも無く、かと言って学校が嫌いになるほど人間関係ひいては勉学などに支障があるとも言えない。そんな私は”終業式”と云う存在にそれ程の感慨を抱くこともなかった。

柚子の香り。
苦くて、あまい、ひとりの香り。

つん、と立ち上ったそれが手で遊ぶ柚子のものだと気付くのにはいつもより随分と時間が経った頃だった。
いつだっただろうか。母さんが言っていたことがふと思い出される。
「風邪をひかないようにね、柚子湯に入りなさいね。冬至は1年でいちばん日が短いけれど、その日から新しく始まっていくということだからね」
そんな話聞いたこともないぞ、と軽く調べてみるが昔からの謂れのようだ。江戸っ子かよという話だ。
くすりと笑いが零れて、それが余計に笑えて、思わずそのまましばらく笑ってしまった。笑っているうちに少し泣けてきて、涙がぽろぽろと湯船に落ちて、水面を揺らしながら柚子の香りと融け合った。
そうか、私は寂しかったのか。
私が寂しがり屋だったのは、もう随分昔の話だと思っていたのに。時の流れは意地悪だ。泣きながら、また笑った。

これから日は長くなっていく。1人の時間が、少しずつ増えていく。
嗚呼、ああ、どうか、どうかはやくおわってください。
年が明けて学校に行ったら、今度はちゃんと話そう。友達と呼んでくれる子はそういないが、最初からそうであるなんて有り得ないから。
1人の夜は、少し、寂しいから。

柚子の、柑橘類のさっぱりとした香りが、つんと少し、鼻にくるから。

12/22/2023, 10:37:19 AM