オリオン座流星群。
僕の一番好きな星座が夜空に星屑を散らす日。
毎年この時期になると、彼にわがままを言って小高い丘にバイクで連れて行ってもらう。
ヘラクレスの毒矢。魚となった神々。勇敢に闘った名も無き蟹。
毎年恒例となった彼からの星々の話を聞きながら星が流れるのを待つ。
きらりと空の一片が光ったかと思うと、白銀が尾をひきながら天球を滑り落ちた。
それに誘われるように次々と尾は増えていく。
代わり映えのない光景のはずなのに、いつまでも見ていられるような気がしていた。
「もう願い事はしましたか?」
隣からそう尋ねてきた彼の言葉で思い出す。
どんどん零れる光の1つを最後まで追うことなど微睡んできた視界では難しく、どれに願っているのかも分からない思いを抱く。
毎年恒例の、ありきたりな願い事を。
【流れ星に願いを】
4/25/2023, 10:26:06 AM