刹那

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誰かのためになるならば

貴方様に、生涯この身を捧ぐと誓った。
あの日から、私の全ては貴方様のために。
貴方様の笑顔が、優しい眼差しが、私の名を呼ぶ綺麗な声が、私にとっては全て宝物です。

しかし最近の貴方様は、どうも思い詰めているように見えた。理由を尋ねても、にこりと笑うだけ。
風の噂で、貴方様は重い難病を患っている事を知った。
それも、寿命はあとわずか。

私は純白のベッドに横たわる貴方様の手を握っていた。
もう、長くはない。
直感的にそう感じた。

「ねぇ、お願いがあるの。
 私の命を、あなたの手で終わらせて」

消え入るような声で、貴方様は懇願した。
聞き間違えかと思いたかったが、貴方様の瞳に迷いはなかった。
大切な人の命をを、自分が奪うなんて。
躊躇う私の手を、貴方様は優しく握りしめ、微笑みを浮かべながら私の手を首元まで持ってきた。
残酷だ、と思った。
それでも、これが貴方様の幸せになるならば。

――どうか、安らかに、お眠りください。

私の涙は暫く止まらなかった。

7/26/2023, 3:26:47 PM