【楽園に向かうために、働きましょう。】
街のあちこちにある看板の一文。我々は生まれながらに地獄へ生まれ落ちていて、善を積んで、楽園へお呼ばれしてもらうために、住民に諭している。
「楽園ってどんな、ところだと思う?」
「きっと、お花が沢山咲いてて綺麗なところだよ。」
「美味しいものもたくさんあるかなー?」
「絶対あるよ!あーあ、早く楽園へ行きたいなー。」
登下校道の会話は大抵、楽園のことばかり。子供の頃から、「楽園に行くために。」とか「楽園とは。」「善を積みましょう。」とか。我々は楽園に向かうために生きて、楽園からの招集を待ちゆくのだった。
「くだらない。」
その、雰囲気を壊すものもいる。その1人が、我々の班の、みたくん。青いネオンを走らせる、全体的に角張った姿をしている。
「また、そんなこと言って!意地悪ばっかりしてると、楽園に行けなくなるよ!」
「楽園なんかないんだよ。花とか旨いものとか、そんなもんないんだよ。」
彼は、ズバッと言った。まるで楽園を知っているかのように。
「そんなの、わかんないじゃん!」
彼に反抗する同じ班の子達の声も聞こえないのか、聞こうとしないのか分からないが、彼は思考を止めない。曲げない。
朝から班の雰囲気は重苦しく、足取りが重く感じた。トボトボと学校につくと、我々以外の生徒たちも集まり、ワーワーキャーキャーと言葉を交わしていた。その雰囲気に包まれ、我々の班の重苦しく雰囲気は、どこかへ消えていった。
「実は、先生。楽園へお呼ばれされましたー!」
その言葉を聞いて、生徒たちは拍手と様々な声をかけた。
「先生!おめでとー!」
「いいなぁ!」
「先生、いってらっしゃーい!」
我々も声を掛ける。みたくんを除いて。
その日は、先生のおめでとうの会と、さようならの会をして、楽しい思い出になった。我々は、先生の楽園への移動が急だったため、帰宅後すぐに花束を買いに行って、先生の元へ届けに行った。
先生は、楽園の人たちと一緒に車へ乗ってしまい、僕らは、走って追いかけた。機械だから、疲れを感じないため、いくらでも走り続けることができた。
ついた場所は、人間の言葉で書いてある看板がそびえ立つ工場のような場所。我々は「なんてかいてあるんだろう。」と互いに質問しあい、解決には至らなかった。その中、1人だけ言葉を発する。みたくんだった。
「……工場……。」
みたくんはお父さんとお母さんが、楽園へ行っているため、ここに来たのは初めてじゃない。きっと、読むことも簡単にできるんだ!と我々は信じてやまなかった。
「みたくん、なんだって?もう一回言って?」
みたくんは、深く呼吸をし、僕らに告げた楽園の真実。
「機械処分工場。」
No.7 _楽園_
4/30/2024, 1:03:15 PM