夜叉@桜石

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私の世界はいつもモノクロだった。
色は意味を持たず、ただものを識別するためだけにある。
絶景など見たことがなく、役割を果たすためだけにすべてを記憶してきた。何も面白くない日々が、しんしんと過ぎていった。ずっとこんな生活を続けるんだろうと思っていた。広い世界に、ひとりで、この役割を担うのだろうと。ずっと、ずっと、ずっと。

でも、違った。

ある日、いつも別行動だった彼らと会うことになった。最初の日に顔を合わせてから、一度も目にしなかった姿を見ることになった。彼らは時々集まっていたらしく、仲が良かった。
なんだか私だけ、初めて会うような気がした。
彼女は、気を使うように、あいつは、突然入ってきた異物を警戒するように、みんな私を良くは思っていないようだった。ただ、彼は私と初めから友達だったみたいに、馴れ馴れしくしてきた。
最初は鬱陶しいだけだったが、しだいに他のみんなも喋ってくれるようになった。
その時、私は初めて楽しいと思えることができた。
毎日、次に彼らと会える日が楽しみになった。
モノクロの世界に、だんだん色がついてきて、アレとの戦いに初めて勝って、仲間と打ち上げをしたときには、私の世界はカラフルだった。
このときは毎日が輝いているようで、表情が乏しい私も少し感情表現がうまくなったと思う。
まあ、素晴らしいと思ったものこそ、なくなるのも早くて。
一人、また、一人。
役目を果たして消えていった。
今はもう、彼と私しかいない。
私の輝く毎日は、少しずつ黒ずんで、ぼろぼろ崩れていって、もう面影がない。
仕事もするし、笑顔で振る舞うし、友達と馬鹿やってるし、何も変わらないけれど。
時々刺さる、彼の視線は、少し、痛いなあ…と思ってしまう。しょうがないのに。意味はないのに。
なんでそんな目をするんだよ。
私、元気だし、大丈夫だよ。
大丈夫、大丈夫、大丈夫。
無理するな、なんて言わないでさ、頑張れって言ってよ。そうすれば、私はまた君たちのために全力で生きるのに。ねえ、お願いだからさ。

一人にしないで。

嗚呼、こんなことなら色なんかつけなければ良かった。ずっとモノクロの世界に一人で生きてれば良かった。思い出なんか作らなければ良かった。
間違いを正してくれたのは彼女なのに。
ルールを教えてくれたのはあいつなのに。
願いを叶えたのは彼のためなのに。
君たちがいたから、私は、生きる意味があったのに。
なんで、失わなければいけないんだ。

カラフルな世界を墨で塗って、私は心に蓋をした。
演技なら、得意なんだよ?

でも、時々思う。
誰でもいいから、気づいて。
ねえ、お願い。
誰か、t▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓▓

5/1/2024, 10:17:46 PM