哀愁、と聞いて真っ先に脳裏に走るのは、ウズベキスタンの遊園地だ。
数年前に旅した時、私は「彼ら」に出会った。
目の異様に小さなミッキーマウスや瞳孔が細すぎるミニオン。瞳の周りがなぜか水色でふちどられたピカチュウ。著作権のルールを突き破った彼らは、みな一様にどぎつい原色で、同じ町にあるモスクの美しい青の階調なんか嘘みたいだ。ちょっとゆがんだ彼らの瞳をみていると、白昼夢のなかをさ迷っているような気持ちになる。
「いや、ここはれっきとしたウズベキスタンですよ」と教えてくれるのは、ミッキーたちの間にたたずむ、スイカを持って微笑むターバンを巻いた老人の像だ。
遊園地の主要顧客であるこどもたちへの猛烈なすりよりっぷりと、それでいてターバンの老人を排さない雑さ。シーズンオフだったのか、その顧客たちもまばらで全然盛況じゃない。これを哀愁ではなくなんというのか。
遊園地と言うよりはデスゲームの会場寄りだ。でも、この迎合っぷりの全力さと空回りっぷり、なんだか無視できない。むしろいじらしくってめちゃめちゃ好きだ。
不要不急の行きたい場所No.1。いつの日か、またあの哀愁の場所へと旅立ちたい。
11/4/2022, 10:39:08 AM