白井墓守

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『溢れる気持ち』

洪水のように溢れる気持ちが、止められなかった。
我慢して我慢して我慢してダムのように決壊したソレは、瞬く間に全てを奪っていった。

○○○

世の中には、良い事と悪いことがある。
良い事はしてもいいけど、悪いことはしたらいけない。
悪口を言うのは良くないこと。人を嫌うのは良くないこと。
仲良くするのはいいこと。喧嘩するのは悪いこと。

……だからずっと、我慢してきた。

僕はどうにも凡庸で、やることなすこと在り来りだ。
特に長所もなければ、短所もない。
至って平均点が取れるような、そんな凡庸さ。

隣の幼馴染は、顔が良くて、性格が良くて、勉強も運動も出来て、色んな人から人気だ。
幼馴染であった僕らは、よく比べられた。
そのたびに彼は言う。

「俺ら、友達じゃん。そんなの関係ないよ」

僕が、一番そう思いたかった。
…………思えなかった。

募って募って、限界まできていた僕はやらかした。

幼馴染の結婚式。
僕は親友としてスピーチを任された。

偽るべきだった。根も葉もない嘘八百を並び立てるべきだった。この世に存在しない親友とやらの役を演じ切るべきだった。出来なかった、そんなこと。

全てを吐露した。
人生にたった1度しかない晴れ舞台をぶち壊した。

僕は全てを失った。
友人、知人から縁を切られ、両親からも絶縁された。

「お前がそんなヤツとは思わなかった。言ってくれれば良かったのに、俺ら親友だろ?」

——僕は親友だと思ったことは、一度も無かったんだよ。

全てを失った筈なのに、どこか清々しい気分だった。
なんとなく空を見上げる。

「あぁ、空ってこんなに青かったんだ」

思わず涙が溢れてきて、僕はボロボロと子供のように泣いた。

やっと、生きてるって気がした。


おわり

2/6/2026, 6:27:40 AM