『誰よりも』
昔から自分の声の小ささは自覚していた。
普段の生活に支障は無いが、大きな声を
出す場面では出来ない自分が辛かった。
「お願いします!」
部活始めは体育館の入り口で1人づつ
先輩のOKが出るまで挨拶を繰り返す。
同級生が一発でクリアする中
私は何度やっても駄目だった。
聞こえない、それが理由だったが
精一杯の声を出しても言われるので
辛くて涙が滲み、声は益々小さくなった。
まるで自分の全てを否定されたようで
その場からいつも消えてしまいたかった‥
今、私は老人ホームで働いている。
入所中のマツさんが
「あんたの声は誰よりも優しいなぁ」
と言ってくれる。
私はその言葉が嬉しくて涙する。
2/17/2024, 10:14:45 AM