ゆと

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【あなたとわたし】

ねぇ、鏡の国の御伽話を知っている?
そこは、苦しいことなく、悲しいことなく。辛いことなく。
理想の世界みたいなの。
あなたは…そこにある幸福に会いたいかしら。
わたしは…そうね。ちょっと怖いわ。

語り部たちの古い古いお話を耳にした時。
鏡の国の御伽話、嘘か真か…とても不思議だったわ。

でもね、今は信じられるのよ。
だって…見つけたんだもの。
鏡の国の世界を
本当に素敵な国で、其処に永住したいと思ったけれど。
兎に止められたの。
『君はこの世界の登場人物じゃないよ』
兎は笑っていたわ、とっても愉快に!
腹立たしいことこの上ない感覚だったわ。
でもね?
わたしは、鏡の世界に居着かなくて良かったと思っているのよ。
あなたと出会えたんだもの。
幸せよ。
あなたも、わたしも、欠けた者同士。
運命を感じたの。

あなたは鏡の国を見てみたい?
きっと、感動すると同時にわからなくなる。
幸せが何なのか。
幸福で存在し続ける事は、幸せなことではないのよ。
だって、光は闇があってこそ輝いて。
逆も然りですのよ。
闇は光があってこそ、淡々と自身の心を落ち着かせてくれる。
明るすぎては、苦しみがわからなくなる。
当たり前の幸福は麻痺してしまい、真の幸せがわからなくなる。

程よく、均等が取れた世界がいいと思うの。
兎は、元気かしら。
素晴らしき、あの偽りの幸福の世界。
紙芝居のように薄っぺらい世界かもしれないわ。
でも、此処は違う。
丸い地球(ほし)
惹かれ合う、運命の赤い糸のような出会いと別れを繰り返す。

あなたとわたしは…このまま本当の幸福を探して生きてゆく。
偶には、別々のレールを歩いて。
時に、一緒に歩いて。
そうして生きていくのだわ。

11/7/2023, 6:39:39 PM