寒さが身に染めて
冬だ。暖房がない限り、何をしても寒い。ぼーっとしてても、目を動かしても、歩いても寒い。
だけど、隣にぼーっとするあなたも同じように寒そうだった。コタツの上に置かれたみかんの皮は綺麗に剥かれて、その皮が包んだ身はあなたの口に運ばれる。僕は、じっとそれを見ていた。
愛されたかったんだ、僕。
誰かに、大切にされたかった。誰かに、温めてほしかった。僕は、守りたくて大切な人がほしかった。
「寒いね。コタツ、温かくなんないね」
「…じゃあ」
僕は、隣のあなたに抱きついた。ぎゅっと、離れてほしくないように、優しく包み込んだ。
「ええ急にどしたのよ、ふふ」
「愛、してくれてる?俺のこと」
「はぁ?愛してるから、私は笑ってるんでしょ」
理想を求めて飛び回るよりも。理想を求めて首を横に振るよりも、近くを見てみようよ。
温かくて大切な人は、すぐ近くにいるものだから。
1/11/2024, 1:08:24 PM