「雪(ゆき)さんの名字ってなんですか?」
「.........朝岡...」
「朝岡雪さん!素敵なお名前ですね!なんか青っぽい感じがして...」
「.........」
「あ、次です!雪さんの好きな食べ物ってなんですか?」
「......なんでも良いだろ...」
「いえ!やっぱり定番中の定番ですよね、これは聞いておかないと!」
俺は心の中でため息をつく。もう二週間もこれだ。俺がバイトの休憩中、この海斗(かいと)という男に質問責めされる。
最初は、健気だなぁとしか思わなかったが、二週間も続けば嫌気が差してくる。
「次はですね...」
「なぁ」
俺の呼び掛けに反応するようにこちらを向く。
「ちょっとしつこいんだよ。初対面にしては馴れ馴れし過ぎないか」
ぴたり、と彼の動きが止まる。
しばらくしたのち、彼が先に口を開く。
「そう、ですよね…...すみません、一人で盛り上がっちゃって...」
彼は段々とうつむきかげんになる。
「あの......もう来ませんから!!!すみませんでした!!」
「え?は、ちょ」
俺が止める間もなく、彼は店から出ていってしまった。
(...少し、冷たくしすぎたかも)
俺は少しだけ後悔したが、切り替えて店の作業へと戻っていった。
お題 「澄んだ瞳」
出演 雪 海斗
7/31/2024, 9:05:28 AM