伝えるって、難しい。
私の好きな人は、ちょっと鈍感。
なにをしても、
「好き」
「寿司?」
どう頑張っても、
「これ、本命チョコだから!
「おっけ。誰に渡せばいい?」
上手くいったためしがない。
「私、一日中、佐原のこと考えてるんだけど」
「うわ、ごめん。この前貸してもらってた千円返してなかったな」
放課後、日直の仕事がまだ終わっていない私たちは、二人だけで教室に残った。
「日直ってなんでこんな仕事多いんだよ。はやく部活行きて〜お前は?面倒くさいとか思わない?なんでそんなに楽しそうなんだよ」
「別に。私は面倒くさくはないかな。好きな人とだし」
「・・・え?」
「え?どうしたの?」
あれ、私、今、何て言った?
「お前・・・おれのこと好き、なのか?」
いや、いい。
「・・・うん」
伝わるなら、
「い、いつから?」
今、伝われ。
「そ、そん!え!?ガチ!?」
「ガチ。ていうか、今までずっとアピールしてきたのに、あんた全然気づかないんだもん」
フるなら、今フッてほしい。
「え、いやだってさ、お前みたいな、高嶺の花?が、おれのこと好きとか思わないだろ!」
は?高嶺の花?私が?
「いや、すげー嬉しいけど、嬉しいのに、告白とかされたの初めてだから、どうすりゃいいのか・・・あのさ、ちょっと考えてもいいか?」
「いいけど・・・今日は、この仕事終わらせなきゃ帰れないよ」
「あ、そう、だったな!」
まだ明るい教室に、ホチキスの音がパチンパチンと気まずそうに響いた。
2/23/2023, 1:50:17 PM