マグカップ。 250円
魔法の込められたカップ、Magカップだ!
縁が欠けている。ここから魔力は全部流れてしまったらしい。
飲み物を飲むのにはまだまだ使えそうだ。
ペンにキャップをつける。
ちょっとゲームのテキストっぽく、書いてみた。
明日、フリーマーケットの商品にしようと思っている、ちょっと縁のかけた、でもまだまだ新しいマグカップの商品紹介だ。
引っ越しが決まってから、自分の物の多さに、ほとほと呆れていた。
縁がちょっとだけ欠けているマグカップ。
使っていない黒いハンガー。
私が被るにはちょっと大きすぎる帽子。
通販でつい衝動買いしてしまった予備のシャワーヘッド。
もう長らく使っていない、まだ使えるものは山ほど出てきた。
近所の公園のフリーマーケットを見つけたのは、そんな、使いそびれた新品の物たちの処分に困っていたところだった。
フリーマーケットなんて今まで参加しようと思ったことすらなかったけど、今のタイミングだけは、参加しようと思えた。
私は、新品のまま埃を被っていたこの物たちに、新たな主人を見つけてやることにしたのだった。
でも、普通に売っていれば買い手はなかなかつかないだろう。
だって、商品はみんなよくありふれた、_中身は新品同様だとしても_まあまあな保存状態のせいか、見てくれは普通の古道具なのだから。
しかし、フリーマーケットの次の日には、私は引っ越さねばならなかった。
だから、なんとしてでも、この物たちに買い手をつけてやらねばならぬのだった。
考えた。
考えに考えた末、私は、ゲームのアイテムっぽく、売り出そう、と思いついたのだった。
そうすれば、少なくとも目には止まりやすいだろう、興味は持ってもらえるだろう、そう思った。
そういうわけで今、私はゲーム制作者よろしく、テキストを考えながら、真っ白なカードと睨み合っている。
説明のおかげで、元魔法のマグカップになった私のマグカップは、誇らしそうに胸を張って、欠けた白い断面を見せびらかしていた。
6/15/2025, 10:15:11 PM