静寂に包まれた部屋
学校の文化祭まであと2週間。そろそろ自分たちのクラスの出し物を決める時期だ。
「えー。次に出し物についてですが、今年は何をやるのか意見がある人はいますか」
学級委員長が夕方のホームルームで司会を進めながら文化祭の出し物についての話し合いがされていた。
文化祭での出し物として人気があるのは、
カフェなどの飲食系。お化け屋敷。作品の展示。演劇。バンド活動。ダンス。ゲームなどの体験系などがある。
隣のクラスと被るのはイヤだし、超大作なことをする時間もない。
「何か意見はありますか?」
なかなか進まない議事に委員長の声にも苛立たちが見え始めていた。
「演劇はどうてすか?今年で高校生活も終わるし、記念になることがしたい。」
「えー。出来ないよ。」
「青春って感じ〜。」
「恥ずかしいよ〜。」
「いいじゃん。思い出作りしようよ」
あちらこちらから賛成や反対の声が上がりホームルームは、収集がつかない状態となっていた。
ダン!
委員長が黒板の前の教卓を両手で叩いた。
「静かにして貰っていいですか。私たちは話し合いをしています。意見があるなら、まず挙手をする。はい。水野さん。」
「演劇でいいんじゃない。実際に役者?やるのは数人であとは衣装とかセットとか音楽とか、それぞれ得意なもの作ればみんなでやれるしさ、面白いそうだよ。」
「そうだな。俺、セットとか作るならやってもいいぜ。」
「なんの劇やんの。」
「衣装は布から選びたいよね。ねえ、裁縫得意。一緒にやろうよ。」
一瞬引いた波は再び収集がつかない状態になっていたが、どうやら文化祭の出し物は演劇できまりそうだった。
「では、出し物は演劇とします。このあとは演目をきめてから役割分担を決めていきます。それぞれ立候補して下さい。」
それから2週間は怒濤のように過ぎ去っていった。誰もが休み時間も昼休みも放課後も、そして休日も返上して演劇の練習に取り組んでいた。
そして文化祭当日。
「ああ、緊張する。」
「私が演劇やってもいいって言ったから、みんなに大変ことばかりさせてゴメンね」
「水野さんせいじゃあないよ。大丈夫だよ。あんなに練習したから」
「そうだよ。みんなで作ったセットに衣装、音楽もすごい完成度だし、楽しかった〜。」
「今度は役者の水野さんたちの番。楽しんできて。」
クラスメートに送り出され、教室の中に作られた舞台にあがる。狭い教室の中では舞台と客席が近く、お客さんの顔が見える距離だ。舞台の幕が開く少し前の静寂に包まれた部屋の空気が、一気にに熱をおび開演へと動き出していく。
クラスメートたちは控え室となっている隣のクラスで円陣を組む。
「成功させるぞ!」
「おお!」
9/29/2024, 12:18:47 PM