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「なんでこんなところで寝てんの?」

「…あ」
眩しい光に渋々目を開けると、目の前にジャージ姿の×××が立っていた。
「おはよう。そんなところで寝てると風邪ひくよ?」
そんなことを言いながら、薄くて細い指の手のひらをひらひらさせて構ってくる。
「…はよ、引かないよ。こんな、天気いいのに」
今日は珍しく快晴で、ふよふよと吹く優しい風が心地よい。
「あのねえ、晴れてるからなんて理由になんないの」
オカンみたいなことを吐き捨てて、俺の横に腰を下ろす。
イケメンは、何をしたってサマになるんだから羨ましいものだよ。ほんとに。
「もー、オカンはこれだから…ぁたっ」
口を尖らせて文句を言ったら頭にチョップが降った。
こいつは力加減ができないところがあるから大変だ。
「だまらっしゃい。せめて、ひなたに行けばいいのに」
ほら、と指を刺す方向をみれば、太陽がさんさんと降り注ぐ丘が見える。
「ひなたとか、暑いじゃん。嫌に決まってんでしょ」
「…そう?」
力いっぱいに顔を歪ませて、睨んでやる。
それをみて×××は、はあ、と大きなため息をついて寝転んだ。
「いや、お前も寝るんじゃん」
矛盾してるだろ、と訴えれば、澄ました顔で俺はいいんですー、と言ってくるので肘で軽くどついてやる。
「いたっ!…なにー?」
返事をせずに、目を瞑ると小鳥の囀りが耳を掠る。
「…ここの、木漏れ日好きなんだよな」
呟くようにそういうと、×××は、へぇ、なんか意外。と間抜けな声をだした。
「確かに、いいよね。形」
「形??」
意味わからないことを言ってるが、雰囲気がいいので流しておこう。
「おやすみ」
「げ、ねるの?」
もうちょっと寝ようかな。
×××を巻き込んでやろーっと。

5/7/2025, 11:40:58 AM