お題『寂しさ』
主様と、かの青年が手を繋いで屋敷にやってきた。
結婚したいと言われ、それぞれみんな祝福する。俺も素直に祝いたいけれど、寂しさが上回って言葉にできない。
「フェネスはまだ私と彼のこと、許してくれてない?」
恐る恐る上目で顔を覗き込んでくる主様に、なんて言えばいいのだろう?
「いえ……つい10年くらい前まで一緒に寝ないと泣くし、ハウレスとこっそり入れ替わっていても気づいて大泣きしていた主様を思い出して、勝手にしんみりしていたところです」
「わーわーわー! フェネス! なんてことを!!」
恥ずかしがって喚く主様はやっぱり赤ちゃんの頃から変わっていない気がする。
「なんて顔してんのよ、フェネス?」
ハナマルさんの腕が俺の首にかかった。
「こーゆーときは祝い酒、ってな。おーいみんな、飲むぞー!」
見れば俺以外の全員がグラスを持っている。
ウイスキーをツーフィンガー注いだロックグラスをハウレスが持ってきてくれた。
「父親役卒業、おめでとう。
俺がトリシアにしてやれなかったことだぞ。もっと胸を張れ」
「ハウレス……」
そこまでの記憶はある。
どうやら真っ先に潰れた俺は相当愉快なことになっていたらしく、しかし誰もそのことについて教えてくれないのであった。
12/20/2024, 6:33:04 AM