『 はなよめさん!』
小さい頃、私はよく幼なじみと花嫁ごっこをしていた。
私がカーテンに身を包んで、
『へへー!みてみてなつちゃん!』
「わー!かわいー!はなよめさんだね!」
『そうでしょー?』
「うん!もちろん!!」
『じゃあ、私となつちゃんでけっこんしようね!』
「!しようしよう!!」
『ちゃんと、けっこんしきあげようね!』
「あげよー!!」
幼なじみは女の子で、
物腰柔らかく一緒にいて楽しい子だった。
そして、なつという名前を持っていた。
それが、幼なじみという関係が、
高校生にもなれば恋人という関係になっていた。
毎日が幸せで、楽しくて、
その子と一緒に行ったところは
どこも思い出に溢れていて、、
それが壊された。
大学生になった頃、デートへ行こうと誘われた。
待ち合わせ場所で起きたことだった。
信号を渡る時に、信号無視の車に跳ねられた。
この目で見てしまった。
最愛の人が、ぐちゃぐちゃになる様を。
そんなこともあったな、
とふたりで住んでいた部屋にたたずむ。
もう少しでこの部屋からも引っ越す。
このマンション自体を解体するそうだ。
ふいに、窓からそよかぜが流れた。
窓際へ行って、カーテンを纏ってみた。
何も起こるはずがなかった。
それもそうだな、と思ってカーテンから離れたとき、
わー!かわいー!はなよめさんだね!
と、そんな声が聞こえた。
なつちゃん、私、忘れてないよ、。
なつちゃんとの婚約。
忘れてないから
だから、私がなつちゃんの分まで生きたら、
そしたら、
ちゃんとけっこんしきあげよう、ね
10/12/2024, 3:52:56 AM