名無し

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 中学生の時、初めて缶コーヒーというものを飲ん
 だ。牛乳でコーヒーを薄めたものしか飲んだこと
 がなかった私からしたら、缶コーヒーという物は
 大人びたものに見えて、魅力的だった。

           ✳︎

 その日、わたしは部活の帰りに部活の先輩と一緒
 に学校にお金を持ってこないと言う校則と、帰り
 に物を買わないと言う校則を破った。
 校則を破ることに抵抗はあったけど、イケナイコ
 ト、ワルイコトをしていると言う感覚は正直言っ
 て好きだった。
 夏の熱が残った、秋のことだった。
 少し暗くなった帰り道の光る自動販売機で、
 私はスポーツドリンクを、先輩は缶ジュースと間
 違えて、缶コーヒーを買っていた。
 しゅんとする先輩がなんだか酷く可哀想に見え、
 交換しますか?と先輩にスポドリを差し出すとさ
 んきゅ、と言って缶コーヒーを差し出して来た。
 貸し1ですよと私が先輩をこづくと先輩がわかって
 るよとはにかんだ。
 まじかで見る先輩の笑顔はなんだかいつもと違っ
 て私のほおを火照らせた。
 先輩と帰路につき、熱いコーヒーを啜る。
 初めて飲む缶コーヒーはあったかくて、苦かった 
 けど少し香ばしい味がして、先輩の匂いがした。
 
 
          初恋の日



5/8/2024, 3:08:04 AM