『誰よりも』(創作)
テレビが着いていた。
暗い部屋に、テレビのチカチカした光が動いている。
「消し忘れたかな。」
照明のスイッチを押す。暗い部屋が明るくなり、生活感のある見慣れた部屋が現れた。心なしかホッとした感覚を持つ。誰もいないのに、部屋に向かって「ただいま。」と思うのも、いつものことだ。こんな狭くて寂しい部屋でも、俺にとっては唯一の帰る場所なのだ。
テレビはまだ着いていた。
画面では、きぐるみの動物たちと、歌のお姉さんと歌のお兄さんと体操のお姉さんと体操のお兄さんが、とびきりの笑顔で歌い踊っていた。
そうだ、朝も見た番組だ。
俺は誰よりも、この番組が好きだ。
大人のしがらみのない明るく元気で素直な世界観に心洗われるようで、見ていると泣けてしまうほどに、この番組が好きなのだ。誰よりも疲れた俺に、お兄さんたちのとびきりの笑顔は元気をくれた。
明日も頑張れそうだ。
2/16/2024, 10:33:32 AM