[悔やんでいる」事になるのだろうか。
母として、短い期間であっても面倒みてくれた事は、嘘偽り無く感謝している。
が、正直に。私が幼い頃より、私と同等の精神年齢だった母の事を、最期まで人として好きにはなれなかった。
実家を出て15年目の夏の日。
突然の叔母からの電話。
「お母さんが黒くなって死んでる」
駆けつけた私の目の前に、蒼黒く変色した母がいた。
警察によると死後3日ほど経っていたそうだ。幸いにも顔は十分に判別出来、不詳の病死と診断されて事件性は無かった。
片付けの為、実家を訪れ黒褐色の嘔吐痕を雑巾で拭う。死者独特の臭いが鼻にまとわりつく。
詳しい死因は分からなかったが、嘔吐物に食べ物が混じっておらず、コーヒー残渣様の時点で吐血したのだと予想された。
悲しいほど、涙は出なかった。
けれど。血の通わない人形と化した母の姿と、見つけられず倒れていた3日間を想像すると、心の深淵が恐ろしく冷たくなった。
…私は、後悔しているのだろうか。
題:もしもタイムマシーンがあったなら。
7/22/2024, 10:38:50 PM