よい

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彼氏が箱になった。

思春期にはよくある事だということは知っているなみんなそっとして見守ってあげろよ

担任が朝のSHで言ったあとみんなは後ろの窓際の席から目を離した。授業中彼はただ静かにたたずんでいた。昼休みになってみんなが食堂に行った教室で私は彼氏の席でお弁当を広げた。

えっとさ、やっぱり私じゃダメなのかな

笑いながら言った。

まだ先輩のこと、忘れられない?

もちろん相手は箱なので私がいくら話しかけても返事は返ってこない。そのまま昼休みが終わった。
放課後になって今日は1人で下駄箱に向かう。すると先輩と鉢合わせてしまった。私は咄嗟に

先輩 いま彼の教室に行ってくれませんか

自分が言った手前びっくりした。先輩も驚いた顔をしている。少しだけ間が空いたあと、先輩はこの上なく真剣な顔でわかったと口した。
次の日、彼は人間に戻っていた。私を見る彼の目には罪悪感が滲み出ている。私は平気な振りをして、やっぱりこうなると思ったよと笑った。彼はごめんと言って本当にありがとうと泣いた。
彼と付き合って、あわよくばなんてことを思った自分がどうしようもなく惨めで帰ってから底なしの自己嫌悪に真っ逆さまに落ちていった。そのまま泣き疲れて寝落ちした。

目覚めると私は学校の机にいて、自分が箱になっていることに気がつく。そして私はただひたすら彼を待ち続けた。

.現実逃避

2/28/2024, 5:51:53 AM