秋茜

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「最近流行ってるハッシュタグ、知ってる?」
「はっしゅ……なにそれ?」
「そこからかよ」

 SNSを眺めながら、向かいに座る友人に話しかける。話題提供の一環だと適当なものをチョイスしたのだが、相手は予想外にデジタル音痴だったらしい。思いもよらぬ返答がきた。

「ハッシュポテトなら知ってっけど」
「サクサクしてて美味いよな! じゃなくて」

 かくかくしかじか。ハッシュタグというのがどういうものなのかを簡単に説明するも、ふうん、とわかってるんだかわかっていないんだか微妙な反応。まあいい。本題はここからなので。

「『秋恋』ってやつなんだけど。どういう投稿につけるんだと思う?」
「あき……こい?」

 眉間にむむっと皺がよる。なんてことはない、秋の風物詩を撮った写真に使われるのだが、乙女チックな言葉選びのため俺も最初は首を傾げた。

「んー」

 あまり興味のない話題だろうに、真面目に考えるのは彼の美点。

「さんさんと照ってる太陽の写真とか?」
「その心は?」
「秋が恋しいなあ、ってときに使うのかなって」
「やるじゃん……!」

 本来の使われ方より気に入った。採用! と一人盛り上がって立ち上がる。

「太陽の写真撮りに行ってくる」
「ぶはっ。馬鹿じゃねえの」

 愉快そうにその肩が揺れる。

「んじゃ、俺はコンビニ行ってくる」
「ハッシュポテト買いに?」
「おう」
「人のこと言えねー!」

 ケラケラとふたり笑い合って席を立った。まるで違うもの同士だけど、似たもの同士。十分後には同じ場所に戻ってきて、またどうでもいい会話に花を咲かすのだ。

9/21/2024, 3:29:48 PM