ありす。

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「なんで…娘を殺した犯人が分かるのに…逮捕してくれないんですか…」

目の前の女性は泣き崩れ…

「あなた達…警察は一体…何を操作していたんですか!?む、娘を…返して…」

目の前の男性は怒りをあらわにした。

「娘さんのこと…犯人逮捕の件…大変申し訳ございません」

「そんなこと…言っても…もう…!娘は戻って来ません!!」

職業柄こんな光景は珍しくない。

「犯人逮捕には至らなかった。犯人を逮捕出来なかった。遺族の気持は。色々書かれているね…」

記事を片手に彼はそう言った。
刑事になってはや三年経った。

彼との同棲ももう三年経つ。
そろそろ彼は、結婚したいという事を零しているが…そんな気持ちに今はなれなかった。
彼のことは好きだ。
どんなに時が経とうとも、彼を想うこの気持ちは変わることはない。

「目の前に犯人がいても…逮捕出来ないんじゃ意味がない…証拠が必要…」

「君は…もう寝た方がいいよ。この間からろくに寝てないだろう。あとは僕がしておくからさ」

「いや…それは出来ない。次は連続女性殺害事件の…」

「いいから!!!寝ないと君の方が倒れてしまう。ノートなら僕が探しておくから。」

調べ物をしていた腕を強引に、掴まれると寝室に連行された。

「はやく…目を瞑って…」

そう彼に諭されて目を瞑る。



「やっぱり…眠くな…」

「そうだ…俺は殺した女の写真はこうしてノートに貼っている。バレてない。あんたに言われたとおりにな。あんたが殺した男も……」

なんでここに居るのか…。この男はまだ警察署にいるはず。
意気揚々と私に見せるそのノートにはこの間のご家族の娘さん…被害者女性の写真がノートいっぱいに貼られている。

無惨な姿だ。
虚しく開いた瞳には何も映っていない。

男は目の前にいる私に気付いていない。
いや、私という存在を認識していないようだった。
男が持っているノートに触れると、私の手は空気を掴むかのようにノートに触れる事は出来ない。
他の誰かと話しているようだ。

「隠しましたよ…場所は…」




「おはよう!眠れない〜とか言ってたけどもう朝だぞ!」

朝日が視界を遮る。
先ほどの男達はもう居なくなっていた。
目の前にいるのは見慣れた彼の姿。
空腹を誘ういい匂いが漂う。

「食べたいって言ってたろ…オムレツ」

「あ、ありがとう…でも食べたらすぐに向かいたいとこがあるの」

男が言っていた場所にノートが無いことを私は祈るばかりだった。
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「ありがとう…ございます…!これで…む、娘の気持は…救われたと思います…」

「この間は…すみませんでした。ありがとうございました。このままだったら…犯人のこと…殺していた…かもしれません…」

目の前のご夫婦は泣き崩れた。
犯人が逮捕されたから。
私はあの後、男が言っていた場所に向かった。
夢なんて馬鹿馬鹿しくて信じたくなかった。
でも、世の中は結果論。
信じたくなかったのに。


「凄いなぁ!犯人逮捕って!どうやってわかったのさ」

「ノートがあったんだよ…。古びて汚くなったノートがね」

彼が嬉しそうに「良かった」と安堵のため息を零した。
そんな彼の手首を掴むと私は手錠をはめた。
手首の冷たい感触に気付いたのか、先ほどの嬉しそうな顔から一気にこちらを冷めた目で見つめてくる。

「あなたに聞いて欲しいことがあるの…私ね」

目尻が熱くなった。
頬から涙零れる。
どんなに時が経とうともこの彼を想う…この気持ちが変わる時が来てくれるのか。

「こんな夢を見たの」

1/24/2024, 8:22:09 AM