どこにも書けないこと
言えないな。言いたいな。
切ないな、この気持ち。
王様の耳はロバの耳ってどんな話だったか子供の頃によく読み聞かせして貰った童話は記憶の彼方に遠い。
その代わり、壁に耳あり障子に目ありなんて諺ばかりが思い浮かんだ。
世知辛い世の中だな、とため息をつきながら形に出来ない想いを持て余す。
携帯を開いてポストしても何処で誰の目に入るかわからない。誰の耳に届いてもおかしくないから黙って口を閉ざした。
だから私の話を聞いてくれるのは主に日記になる。秘密を唯一知っている、私の為の私だけの友達。ペンを片手に薄暗い部屋で目の前のノートは黙って私の心を書き留めてくれた。
突如薄暗い部屋に強烈な振動が走った。
グラグラと揺れる様に大きな地震が起こったかと慌てて外に出ようとすると外から大きな悲鳴が聞こえる。
『隠れろ!』
『出てくるな!』
そんな声が大きな衝撃音に掻き消えた。
無我夢中で目の前のノートを掻き抱いて走り出す。その後ろで激しい閃光と爆発音が響いている。
足元に転がった本に割れたガラスが舞った。
大好きだった『アンネの日記』が
遠い世界からすぐそばの世界になるなんて
こんな事、何処に向かって書けば良いの
2/8/2026, 5:03:09 AM