NoName

Open App

その奇術師が私の住む街に
やってきたのは
晴れた風の強い日
彼が繰り出す手品に
みんな夢中だった
奇術師は最後の挨拶の後
シルクハットから羽ばたいた鳩と共に
あっという間に空に消え去った
子供の頃に見た不思議な出来事
溶けるというよりは
空に吸い込まれていったみたい
跡形もなくさっぱりと
何も残さず完全に
あんな風にいなくなれたら
きっと爽快だろうな

5/20/2025, 11:43:13 AM