kiliu yoa

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 空を見上げる。夜は、宇宙を映し出す。

 北極星で今進んでいる方角が分かり、月の満ち欠けとその方角からおおよその今の時間が分かる。

長きに渡り過ごした……此処を去るのは、何だか物悲しかった。

 眼が悪い和多志は、星は余りはっきりと見えず、この分かり易い星を頼りに旅路を進む。

 途中に貿易船に乗り、帰路を進む。貿易船から見る夜空は、本当に美しい。空を遮るものは、海には無い。船首は、水平線を一望できた。

 幼き頃には、見れなかった。当時はずっと下を向いて泣いていたし、二度目は、かなり心が虚ろで何も感じなかった。三度目の今日、初めて感動した。
 心から、『嗚呼、生きていて良かった。』と思えた。こんなことは、初めてで泣きそうになった。
 
 故郷に良い記憶は余りない。知人の多くは、疾うの昔に亡くなった。
 
 和多志の帰る家は、温かい家族は居ない。其処にあるのは、明確な序列と主従関係のみだ。力は有れど、情は無い。富は有れど、平穏は無い。

 なんとも虚しい格式高い家系、其れが和多志の一族の宗家だった。


 でも、故郷の帰路は本当に素晴らしいもので…上司の命令状を受け、帰路に就いて良かったと初めて思えた。

 

 

 

7/6/2023, 2:56:18 AM