霜月 朔(創作)

Open App

真夜中


灯りの消えた暗い廊下を、
足音を殺し、一人歩いていきます。
遠慮がちに窓から差し込む、
青白い月明かりだけを頼りにして。

真夜中の静けさに、
まるで世界にたった一人で、
取り残された様な錯覚を感じ、
何処か不安になったにも拘らず、
灯りを灯そうとは、思いませんでした。

遠くから聞こえてくるのは、
夜行性の獣が獲物を求めている、
呻き声でしょうか?
それとも…。

真夜中は、
多くのものを闇で覆い隠します。
血生臭い行いも、犯罪行為も、
…人の醜さも。

真夜中の闇が、
私の過去の過ちも、後悔も、
叶う筈のない恋慕も、
いっそ、私自身さえ、
全て覆い隠してくれれば良いのに…と、
願わずにはいられませんでした。

5/17/2024, 5:28:38 PM