冬至。

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                 びーえるかな。


酔い潰れて乗せられたタクシー。
「住所教えろ」
行き先を誰ともなく伝える。
「それでは運転手さんお願いします」
静かにそう言って車内から消えていくその手を取って引き寄せた。
「送ってって」
甘えた声で目の前の男の目を見つめると一瞬驚いたような表情を見せた後黙って隣りに収まったようだった。
それがなんだかおかしくてバレないようにこっそり口の端だけで笑った。

「教えた住所がラブホて、お前ふざけてんのか」
肩に腕を抱えられて運ばれた俺はそのまま乱雑にベッドの上に投げられた。
そのままドアの方へ向かう背中を呼び止めて。
「ねぇ」
律儀に振り返るその嫌そうな顔に笑いかける。
「しよ」
「何をだよ」
「せっくす」
さらに一層嫌な顔をされた。
「俺と寝よう」
ベッドの上から誘うように彼を見上げる。
「ひとりで勝手に寝てろ」
冷たく言い放たれて出て行かれてしまった。
「ざーんねーん」
結構本気だったのに。
誰もいない部屋でひとりポツリと呟く。
飲み過ぎて頭が痛い。
ぐらぐらと揺れる世界に目を閉じた。

次の日会社で彼を見かけて足早に近づく。
「昨日はどーも」
前を行くその肩に手を掛けて話し掛ける。
少し揺らぐ肩。
だけどぶれない口調。
「酒はほどほどにしとけ」
「はいはーい」
「手をどけろ。歩きにくい」
そんなに本気で嫌そうに言わなくてもいいじゃない。
その肩に乗せた手に力を込めて引き寄せて耳元で囁く。
「ねぇねぇ…昨日の、」
「酔って覚えてないとか俺はないけど?」
背中をこちらに向けたままの彼はゆっくり振り返って静かに俺を見つめてくる。
ねぇ…君はいま何を考えてるの?


                   (君は今)

2/27/2026, 10:05:24 AM