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#海の底


脚から全身を駆ける寒気。
ぴちゃぴちゃと水をかき分ける度に、砂の感触。

生存本能からなのか、心臓が激しく鳴る


何時からだろう。
比べられる事から、逃げる様に電車へ飛び乗り
そこそこ生活出来ていた筈なのに。

いつの間にか、己の身はすっかり、鍋にこびり付く焦げの様になっていた。


限界だった


あの家から出れたと思ったのに
逃げ出した先は、鳥籠だった訳で。

何とか立て直そうとした心は
そうするより容易く取り壊され。

嗚呼、もうダメだって

気が付いた時には、一面に青が広がっていた。

ゆったりと揺れるその光景は
まるで私を誘っているようだと、変な妄想をした。

…昔から、好きだったのだ。
太陽を受け輝く青も
青を泳ぐ、自由な魚達も。

何時か自分も、そんな青に触れてみたかった、泳いでみたかった。

それが、こんな形で叶うとは思っていなかったけれど。

自傷的に笑いつつ、私は足を進めた。

砂の感触も、全身を駆け巡った冷たさも、
もう何も感じない。

何だか一体に成れる様な気がして、少し嬉しかったり。


…嗚呼、もう何処へだって行けるんだ。

居場所がないと嘆くことも
心を壊されることもない

…どうせなら、海の底が、見れたらいい

嗚呼、実に楽しみだ!!


―――


少しして。
浜辺に、女の子の姿はなかった。

彼女は何処へ行ったのだろう。

それは、足跡すら攫う、青い青い海しか知りえない

1/20/2026, 11:54:17 AM