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 それで良いのかと問いただす眼差しだ、と思った。
 それだけで不思議と報われる気持ちで満たされていくようだった。
 深く頷き、自分の心を肯定しながら祈りのために手を重ねた。
「ありがとうございます」
「礼など言うものではない。むしろ其方に対してこちらが礼をするものだ。其方のたったひとつきりの願いなど、無下にするものでもない」
 王者の風格とは、こうした言葉の端々にも宿るのだろう。
 この方の言葉からは、偽りを感じない。この身に宿る能力のひとつで、偽りや悪意を悟ることができる。なればこそ、この方にはなにひとつとして誤魔化しの気持ちがないことも、安心して委ねられることも理解できた。
「それでもわたくしは、陛下や皆様のやさしさに感謝をしたいのです」
 この朽ちることが確定している身で、ひとつきりの願いを見届けることを許されるのだから。

「どうか、我が母国の王族を、ひとり残らず滅ぼしてください。その滅びの暁には、この国の繁栄の礎となりましょう」

#1つだけ

4/3/2023, 7:19:03 PM