生温くなったコーヒーを流し込めば、喉に貼り付くような苦味に思わず顔を顰める。
確かに自分にも至らないところはあった。責任も増えて任される仕事や、昔からの男友達を優先することも、少なかったとは言えない。でもその分、アイツも女友達を理由に予定を合わせられないことだってあった。
「…………。」
そんなことを思ってしまう時点で、俺たちはすでに終わっていたのかもしれない。相手を尊重せずに、やられたことをやり返すような関係性は、長続きしないだろう。
空になったカップには、何も残っていない。
優しげな店のマスターが近付いてきた。
「おかわりはいかがですか?」
「……じゃあ、お願いします。」
「はい、少々お待ちくださいね。」
まあでも、さよならを言った彼女を追い掛ける気力も湧かなかったし、コーヒーが冷めるまで、ここから動けなかったんだ。
遅かれ早かれ、こうなっていたのかもしれない。
「お待たせしました。」
マスターの手で、ポットから注がれたコーヒーからは、白い湯気が立ち上っている。さっきのコーヒーも最初は熱かったんだ。
「折角ですので、熱いうちにどうぞ。」
マスターに言われた通り、熱いうちに喉を通したコーヒーは、なんだか甘く感じて笑えてしまった。
コーヒーが冷めないうちに
9/26/2025, 1:40:43 PM