小音葉

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爪先立ちで優雅な素振り
汗ばむ首筋と引き攣った口角
震える足でよろけて歩いた
地を這う虫の惨めなダンス
それでもきっと、今よりは輝いていた

寝転がっても両手を広げても
四方八方見渡しても、奈落は遠ざかった
雨も星も降らない静かな夜
凍える指先を握り合ったことを思い出す
今や満たされることのない空洞の腹
飛び立つ翼の代償に空を手放した

この歌声は届かない
花咲く頃には盛りを過ぎて
旅立つにはあまりに蒸し暑い
私は遅かった
あまりに遅過ぎたのだ
届かないでくれと嘯きながら
灯りへ擦り寄る羽虫の如く
自由で不自由な命をぶら下げて
目を恐れ、熱を求める

呪いになるなら記したくない
呪うくらいなら干からびて、骸をその目に焼き付けて

(願い事)

7/7/2025, 11:35:42 AM