「わしらは浜松の国衆と、手を取り合って進むんじゃ!」
殿は、興奮して叫びながら、部屋の中をグルグルと歩き回っている。きっとアドレナリンが出まくっているんだろう。
しかしこの後起きることを知っている俺は、迂闊には賛同できない。徳川はこの戦で、コテンパンにやられる。それが史実だ。
この戦の戦死者は、たしか3000人くらいいたはずだ。三方原で武田軍に待ち伏せされた徳川軍は、文字通り惨敗に終わる。その中に俺が加わるのはゴメンだ…
「と、殿!岡崎へはいかが知らせましょうか?」
おずおずと俺は声をかけた。出来れば、何とか出陣を思い止まらせたい。しかしそれでは、歴史への干渉になってしまう。出来ることは、そう逃げることだ。
俺は伝令として、城を出ることにした。
【手を取り合って】
7/15/2023, 2:22:19 AM