Naru

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君は教えてくれた。
知らないだけできっと灯火はそこにあると。
いつも灯火に囲まれて生きているということを。

『トワイライトの中で』

第一章 暗闇の中の孤独

おはよう、行ってきます、ただいま、おかえりと呼びかける声はない。
寂しいような、どうでもいいような。
「おはよう。」
誰もいない家に、自分の声だけが虚しく響く。返してくれる者はいない。
本当に、いないのだと。本当に、もう帰ってこないと。分かっていてもその影を探す。
「行ってきます。」
もう亡き兄と、もう亡き母にそう言い家を出た。
薄明時に外に出て、ランニングをするのが毎日の日課となっている。
この時間帯の空気は澄んでいて、人が少ないため、静けさがあり落ち着く。
物心ついた頃から、空を見る事が自然と身について、暇があれば何時間でも見ていられる。
人の価値観や、人の考えは分からないけれど、きっと世の中が言う“普通”ではないのだろう。
そんな事を考えながらランニングをしている。
日の出を見ることも珍しくなく、それでもやはりいつ見ても綺麗だというのは自然の良さだろうと思う。
この時間だけが唯一心が落ち着いていて、情緒が安定しているように思う。
「はっ、、はぁ、、」
そう吐く息は白く、冬を感じる。息を吸うと喉を通る冷たい空気。なにより朝は冷えていて、人も少ないのできっと寒いのだろう。
僕は人がいる所のほうが寒く感じる。
そういうところがきっと“普通”ではないのだろう。
「もう、6時か、、」
一度家に帰って朝食を食べ学校へ向かう。
「行ってきます。」
もう一度兄と母に声をかけ家を出る。
学校に着くと、いつも通りの日常がそこにはあった。
「おはよう!昨日のドラマやばかったよねぇ!」
趣味や遊びの約束など、人によって話すことは違うだろうが、僕は遊ぶような人もいなければ喋る人もいない。
人間はきっとそういう人間を好まないのだと思う。そりゃあそうだろう。
みんながわいわい騒いでいる中、一人だけ黙って窓の外を眺める変な奴のことなんて誰もわざわざ好んだりすることはないだろう。
教師が教室に入ってくると、教室が静まり返る。
「今日は転校生を紹介する。入れ。」
また教室がざわめく。
入ってきたのは、儚い笑顔する男の子だった。
「汐川斗希です。よろしくね。」
教室に拍手をする音が響き渡る。さすがにしないわけにもいかないと思い、同じように拍手をした。
「汐川は、、夜川の隣の席でいいか?」
「どこでも大丈夫です。」
そう柔らかな笑みを浮かべた彼は僕の隣の席に座った。
「よろしくね。夜川くん。」
「あぁ、、よろしく」
なるべく関わりたくないのであえて素っ気なく返事をする。それにも関わらず笑顔で話しかけてくる。
「夜川くんは何が好きなの?」
「夜川くんは趣味とかある?」
「夜川くんは毎日必ずやってることとかある?」
面倒だが適当に全て返すと全て丁寧に返事をしてくる。
その純粋な眼差しから僕は視線を外してしまう。
見透かされているようで、怖いのだ。いや、心の中を見られているようで居た堪れない気持ちになる。
そのまっすぐな瞳で見つめるなと叫びたくなるほど、その目は濁りがなかった。
初めてこんなに綺麗な人間を見たと思った。
それと同時にこのまっすぐな瞳には何が映っているのか気になったのだ。
踏み込みたいと思ったのはこれが初めてかもしれない。だけど、踏み込んだ時、踏み込まれることもあることを僕は知っている。それでも、やっぱりその瞳には何が映るのか気になった。この世界の残酷さや汚れに全く触れてきていないのかと思ってしまうほど綺麗だった。
吸い込まれるようなその瞳に惹かれた。誰かに惹かれるなんてことは僕の人生初めてのことだった。
どうやら彼はコミュニケーション能力も高いようで、次の日にはもう彼の周りには人が沢山いた。
「汐川ー次の体育バスケなんだけど一緒にペア組まない?」
「僕は夜川くんと組むから、ごめんね。」
僕は目立ちたくないのでいつもペアを組むときはあまり目立たない子か、余ったときは先生とペアを組む。
それだというのに彼は僕と組むと言ったのだ。その時にふと出てきたのはなぜ?という疑問。
彼がこちらへ歩いてくるのを見て、逃げるように教室から出る。そうすると夜川くん!と呼び止められる。
やばい、周りの視線を感じる。無視したらさらに目立つ。だから返事をした。極力素っ気ない返事で返すように努めて。
「なに?」
「次の体育、ペア組まない?」
「僕ペアもう決まってるから」
咄嗟に嘘をついてしまった。目立ちたくないのだ。転校してきて1日でペアを組む相手ができるほどの人間と組んだら目立つのは目に見えている。そうすると、また儚げな笑顔を浮かべた。
「分かった。無理に誘ってごめんね。また機会があったら一緒に何かしたいな。」
僕はその瞳から逃げるように彼に背を向け体育館に向かった。
案の定ペアなんていなかった。いつも組んでいる大人しい子もどうやら共通の趣味がある子と仲良くなり、すでにペアを組んでいるようだった。
しょうがない、先生とペアになるしかない、、
そう思っていると突然声をかけられた。
「夜川くん、もしかしてペアいなかった?実は僕もペアいないんだよね。みんなもう組んじゃってるみたいで。一緒に組もう?」
ここまで来たらもう組むしかない。また素っ気なくいいよと答えた。
そうすると心から嬉しいというような表情をした。
「本当?嬉しいな。」
「別に、ペアいなかっただけだし。」
あえて冷たく言うと少し悲しそうな顔をした。咄嗟に言葉が出た。
「ごめん、そういう意味じゃなくて。組む人いないなら、僕とでもいいかと思っただけ。ほら、汐川って結構友達も多いみたいだし、僕あんま目立つタイプじゃないからさ。僕とじゃないほうがいいんじゃないかって思っただけ。」
「え、君は、、僕にとって、、―――、だから。」
何か言っていたけどあまり聞き取れなかったので聞き返した。そうすると柔らかな笑顔を見せた。
「ううん、なんでもないよ。」
気になるけれど、彼の笑顔がいつもとは違う雰囲気を纏っていることに気がついて聞き返すのはやめた。
体育が終わり、すぐ教室に戻ろうとするとまた呼び止められた。
「夜川くん、ペア組んでくれてありがとう。夜川くんってバスケ得意なんだね、上手でびっくりしちゃった。」
「別に、そんなことないと思うけど。」
「僕は全然運動できないから羨ましいよ。」
羨ましいとか言うけれど、普通に上手かったなんて口が裂けても言えない。羨ましいと言われたことに疑問を抱きながら、周りからの視線を感じすぐに離れ教室に戻った。
教室に戻ると彼がまた話しかけてきた。
「夜川くんって下の名前なに?」
「透空」
「漢字どう書くの?」
「透き通る空で透空。」
「綺麗な名前だね。僕の下の名前知ってる?」
「斗希だろ?」
「覚えててくれたんだ、嬉しいな。これからさ、お互い下の名前で呼び合わない?僕も透空って呼ぶからさ、透空も斗希って呼んで?」
「斗希」
名前を呼ぶとまた嬉しそうに笑った。名前を褒められたことなんて初めてのことだったし、斗希も十分綺麗な名前だと思う。まあ、名前綺麗だね、なんて褒めたりはしないけど。
放課後、すぐに帰ろうと、帰る用意をしている時名前を呼ばれた。
「透空、一緒に帰ろうよ」
こうなることが分かってたから避けてきたのに。こうやって踏み込まれるのが嫌だから遠ざけてきたのに。ただただ苛ついた。こんなに人を避けて生きてきたのに。なんで彼は僕と関わろうとする?他の人みたいに何も言わない暗いやつだと笑ったり無視したり気にしないで生きてくれる方がよっぽど良かった。
それなのになんで彼は僕と帰ったりペアを組んだりしようとするんだ?僕は不思議だ。
それを言うことは勇気がいることだと思っていた。だけど、いとも簡単に言葉にすることはできた。
「なんで僕と関わろうとするの?」と。
そうすると彼は寂しそうに笑った。
「君が僕を救ってくれたように、今度は僕が君を救いたいんだ。」
言葉の意味が分からず、ただ混乱する僕に説明もせず付け足した。
「君が分かっていなくても、僕が君に伝えるときがきっと来る。だから、今は何も言わずに傍にいてほしい。透空は他の人たちが思っているような人間じゃない。暗くて、思いやりがない人間だって思い込んでるでしょ?」
言い当てられて、僕は確信した。きっとこのまっすぐな瞳に嘘はつけない。全て見透かされていると錯覚するほど、彼が言うことは当たっていた。そう、僕は自分のことを明るいと思ったことはない。自分の都合で人を遠ざけて生きているような人間のどこに思いやりがあるというんだ、と。そして僕は思いやりがない人間をやめようともしない。そんな自分が嫌なのだ。きっと彼には、このまっすぐな瞳には嘘はつけない。だから、正直に答えた。
「君は僕の何を知ってるんだ。僕は君が思っているような人間じゃない。君が思うほど優しい人間でもない。それなのになんで僕に話しかけたり関わろうとするんだ。」
「果てしのない孤独を感じているんでしょ?」
まただ。どうしてこうも簡単に僕の心を言語化するんだ?何もかも全てこの瞳には分かるのか?
そんな疑問が彼にも伝わったんだろう。
「君は分からなくていいんだ。でも、これだけは覚えておいて。君は君が思っている以上に価値があって、君が思っている以上に大切な存在だって。」
一番難しいことを要求してくるなと言いそうになり、慌てて口を噤む。そんなことできるわけないだろ、という言葉を飲み込んだ。
「分かった。」







すいません!また続き後で書きます!
このアカウントでは小説を書いていこうかなと思っています。
ちなみに前アカウントあったんですけど、スマホ自体が壊れてしまったので、新しいアカウントです!
前の名前と同じにはしておきます!Naruだった気がする!たぶん!
あなたの心に残るような小説を残したい。そう思っています。
あなたが、私の拙い文章を呼んでくれたあなたの人生が輝かしいものでありますように。

11/7/2025, 2:52:32 PM