泡藤こもん

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それは幼い私にとって友人とも言えた。
どこに出かけるにも持って行った。遊ぶ時も、夜寝る前にも眺めた。
やがて背表紙が剥がれていって、表紙の角がふわふわとほどけていってもまだ、私の友達だった。
ページがとれてセロハンテープで貼り直した。
表紙が外れる頃には、もう私はあの絵本の友達ではなくなっていた。
今は同じ顔をした別の友人が、本棚でひっそりと立ち、小さな手が伸びてくるのを今か今かと待っている。残念ながら、その子は娘の「一番の友人」では無いようだけれど。

6/16/2023, 4:07:28 AM