NoName

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 ベッドの傍らに立ち、すう、すう、と寝息をたてている彼女の寝顔を見下ろす。あどけないその寝顔は、起きているときの剣呑さを嘘のように隠してしまっている。体に刻まれた幾多の傷痕も、皮が厚くなって武骨になった指先も、シーツに下に隠されて、今だけは年相応の少女に見えた。
 私は膝をつき、ベッドに両肘を置いた。手を組んで、頭を深々と下げる。
「どうか、夜だけは子供のままで居させてあげて」
 戦場に立つ貴女が好きだ。何者にも臆さずに突き進んでいく勇敢さに心底惚れている。けれど、貴女はまだ年端もいかない少女なのだ。だから、どうか。
 バカね、と微かな笑い声が、聞こえた気がした。

5/12/2026, 2:03:48 PM