あおいうみ

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ページをめくる

私の指は太い。そして先っぽはヘラ型。爪は小さい。

母の指は白くて、細くて、綺麗だった。
子供の頃、隣に座ってよく一緒に読書をした。
母がその指でページをめくるのを見ると、羨ましくて仕方なかった。

何で私の指はこんなに太いんだろう。
雑誌に載っていた指の体操をしても、マッサージをしてもちっとも細くならない。
こんな手じゃ絵にならない。

そのコンプレックスはいつもあって、綺麗な指の友達を見ると惨めな気分になった。
人に物を渡したりするのも、授業で立って教科書を読むのも、体育のフォークダンスで人と手を繋ぐのも苦手だった。

大学に入って彼氏ができた。
男だけど、細くて白くて長い指。
やっぱり私は自分の手を堂々と出すことはできなかった。
ある日2人で指輪を買いに行ったら、何と私の方がサイズが大きかった。
彼は気にしてなかったけど、私は恥ずかしくて惨めで自分の手を呪った。
店員さんにも笑われている気がした。

あれから何年も経ち必死で子育てをしていたので、そんな感覚忘れていた。
いや、仕事でパソコンを使う時に誰かが近くにいたり、横の人の手が綺麗だったりすると多少は思い出してはいる。
でも、以前ほどは気にならなくなったということだ。

この手はもう。最後のときまで私と一緒だ。
急に細く白くなることはありえない。
それでも私は、大好きな本のページをめくる事ができる。それで十分幸せじゃないか。

今まで嫌ってばかりいてごめんよ。
これからも一緒にたくさんのページをめくっていこう。最後まで、どうぞよろしくね!
お題を見て、そんなことを思った日。




9/2/2025, 11:25:46 AM