【安らかな瞳】
あんな噂を聞いたあとでは、平常心でいられるはずがない。鵜呑みにする気はない。その心とは裏腹に、変に意識してしまう自分がいた。……安らかな瞳は、持ち主の本心を語っている。いつも以上に優しく儚げで、どうしようもなく愛しい。でも、屈託がないと言えば嘘になる。本心を悟られまいと言わんばかりにちょっとこわばった顔をしても、いつも君を見ていた私の目はごまかせないよ。ほら、眉毛も困っている。
「バレンタイン、ありがと」
「え!? ありがとう!」
嬉しいけれど、どこか痛い。テンションは上げて言ったつもりだが、自分でもどこかわざとらしさを感じる。義理なんだろうな、と思ったのがバレてはいないだろうか。そんな痛みをちくちくと抱えながら、何かから逃げるように廊下に出た。
3/14/2026, 2:19:58 PM