突然の君の訪問。
ぴんぽーん。
あぁ、宅配便かな?まどろみかけていた脳を対人モードに設定し直して、ドアを開ける。目の前に見えたのは、見覚えのある、眼鏡をかけた女の子……
「お邪魔しまぁす!」
開けた少しの隙間から腕が伸びてきて、その人はうちの中にするりと入ってしまった。
「……棚橋さん。何しに来たんですか」
棚橋さんは意味ありげに笑う。
「前は中野くんが廣瀬さんの通い妻になったでしょ。こんどは私の番」
ふふん、と自慢げに言って、棚橋さんは手に持っていた手提げ袋を僕に見せつけた。
「見て。スーパーで買ってきたんだよ」
「ネギが飛び出てますね」
「うん、妻っぽいよね」
「妻っていうか、お母さんですかね……」
棚橋さんはキッチンに進んでいってエプロンをとる。
そして自然な流れで僕にエプロンをかけた。
「材料は買ってきたから、あとはよろしく!お鍋の材料のつもりだけど、中野くんならいろいろ出来そうだよね。……アクアパッツァで!」
……ぜんぜん通い妻じゃない。通い妻は、もっと献身的なはずだ。
8/28/2024, 10:33:42 AM