腹有詩書氣自華

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《七色》

 雨上がりの川面に、七つの色が揺れている。
 朱、橙、黄金、若草、群青、藍、そして菫。
 「綺麗だね」

 並んで立つ影のひとつが、ふと呟いた。

 「でも、虹はすぐに消えるよ」

 「……だから美しいのかもしれないね」

 水に映る光は儚く、触れれば滲み、やがて流れ去る。

 指先を絡めた手が、ほんのりと温かかった。

 この温もりも、七色のように――消えてしまうのだろうか。

(了)

3/26/2025, 11:47:54 AM