wtプラス、819プラスネタ

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鼻腔をくすぐる匂いにうっすらと目を開ける。いつの間にか朝になっていて、自分が寝ているところが柔らかなベッドの上だと思い出す。映る天井は懐かしい我が家、ゆっくりと体を起こし匂いのするキッチンへ向かう「起きた?おはよ、ちょうどホットケーキ焼いてたけど食べる?」「ああ、よく寝た、おはよう」すでに起きていた彼女の姿に帰ってきたのだと実感する。その足で洗面所に向かい、顔を洗う、鏡に映る自分の姿はいつもと変わらない。昨日まで傷だらけで戦い、生死と隣り合わせにいたはずなのに、後ろを気にせず顔を洗う余裕のある生活に戻ってきた「何度経験しても慣れないな」冷たい水が頭を覚醒させる。リビングに戻ればすでに皿に盛られたホットケーキ、グラスを持った彼女もゆっくりと席につき「食べよ」穏やかに笑う「いただきます」ひとくち、口に運べば広がる甘さが幸せを体現する「ん、おいしい」「ああ…」食事に執着はない、出されたものを食べるし、こだわりもない。それでもこうして楽しむことは遠征中はできない。何度行っても変わらない、常に緊張が纏わりつき、心が休まることなどない「蒼也、今回も、無事に帰ってきてくれてありがとう」これも何度目かの彼女のセリフ、毎度のことなのにこうして言葉にしてくれることが嬉しい「今回は少し長かったから、ちょっと不安になっちゃった」「俺も、早く会いたかった」正面に座る彼女の頬に指を沿わせればくすぐったそうに笑う。触れられる距離にいる愛おしい存在「幸せだな」「どうしたの?珍しいこというのね」「後悔したくないんだ」当たり前の日常を、それだけを祈る日々

何もいらない

4/21/2024, 6:30:30 AM