「ひなまつりらしいよ、今日」
僕は何気なく呟く。
彼は黙ったまま僕のそばに座った。彼はあまり喋らない。
まぁそこが可愛いんだけれども、ちょっぴり寂しい。
唯一声を出す瞬間は、ご飯の時だけだ。
ご飯の時間になったら必ず僕を呼んでくれる。
そんな彼を見つめながら、お雛様の形のクッキーをかじった。
「うま」
口の中でサクサクと音が広がり、飛び越える美味しさに思わず両頬を抑える。
「ほっぺ落ちてないよね!?」
そんな馬鹿な事をほざいていると、ふとご飯の事を思い出した。そろそろだろうか。
クッキーを頬張りながら、時計に目をやる。
「1分前…」
ご飯の時間まで1分前。後もう少しで彼の声が聞ける。
僕は黙ってその時間を待ちに待つ。
5…4…3…2…
時間になると同時に、愛おしい彼の声が聞こえた。
「にゃあ〜」
今日もいつもと変わらない雛祭りになりそうだ。
3/4/2024, 6:24:11 AM