喜村

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 私には、ユウカちゃんだけいればそれでいい。
暗い夜道、街灯もぽつぽつしかない暗闇を、手を繋いで歩く。
 あたりには誰もいない。田舎とまではいかないが、都会でもない中途半端な町だ。
「辛くなったら連絡いれてよ~」
 ユウカちゃんは困ったように声をかける。
「付き合ってすぐの人にそんなことしたらめいわ……」
「迷惑なんかじゃない!」
 私の言葉を遮り、手を強く握る。
「私達、付き合ってるんだから、楽しいことだけじゃなくて、辛い時も一緒に乗り越えなきゃ! 恋人同士でしょ?」
 ユウカちゃんの熱弁に私は面食らった。
「それとも……やっぱり、恋人、じゃ、やだ……?」
 恐る恐る伺う私の大切な恋人。
私は首を横に降った。

 親が親としてあり得ない扱いをしてきても、友達にいじめられていても、この人がいれば無敵な気がする。
 私とユウカちゃんの二人ぼっちの世界でいいのに。他の人なんて、誰もいらない。
 手を繋ぎながら、私は月を見上げた。


【二人ぼっち】
※【泣かないよ】の続き

3/21/2023, 11:55:11 AM