『命の燃え尽きるまで』
滴り落ちては土に広がる赤が、痺れ、震える体が、知らせるは自らの幕引きの時。心臓はかつてない程の早鐘を打つ。
これは恐怖だろうか?否、喜びだ。
奥に引っ込んで愛する者に囲まれ、穏やかに残りの時間を過ごすなどやはり自分には向いていなかったのだ。根っからの武士なのだ。戦闘狂とまで呼ばれたのだ。最期を迎えるのは戦闘の最中が良いに決まっている。それにこの名刀を飾りや鈍にすることもない。安心しろ、一緒に連れていってやるさ。
息があがる。まともな思考はもうできていないのだろう。脳裏にぼんやりと浮かぶ、妻や弟子の呆れた顔も今や懐かしさばかりで煩わしくも何ともない。
さあ俺に奇襲に仕掛けた無礼で恐れを知らない、最期の愛すべき決闘者よ、その目でよく見ていろ。後世に名を残す戦闘狂の散り際を、この命の燃え尽きるまで。
9/15/2023, 12:54:05 PM