【勿忘草】
『なぁなぁ、あそこにある、洋館?って言うの?あれさ、俺が子供の頃から、ひょっとしたらお婆ちゃんが子供の頃からずーーーっとあるんだよな。お前知ってる?』
『いや、、しらね。』
男性2人が、洋館の近くの小道を歩きながら会話をしている。
1人の男が言っている洋館とは、辻道のちょうど左にある白い屋敷のことだ。
そこはもう何百年も手入れが行き届いてないらしいが、外壁は蔦だらけ、だが何処か趣がある。
外に出たままになっている錆びれたガーデンチェア。
木にかかったままのブランコ。
全てが廃れ、現代にはそぐわず、ひっそりとただそこに鎮座している。
周りには不気味だと、取り壊してくれと言う輩も多いが、何故か業者達は取り壊そうとはしない。
何故かは、業者達も知らない。
ただ、日本政府からこの洋館には一切近づいてはならないとされている。
『、、、なぁ、あの洋館入ってみねぇ?』
『はぁ?!正気かよ、、見ろよ、日本国憲法通用しないって書いてあるぞ?』
『いいからいいから!』
好奇心旺盛な友人に連れられ、俺は洋館の中へ足を踏み入れた。
ーー
『うわっ、めっちゃ蜘蛛の巣あるじゃん、、』
友人は周りの椅子だった残骸を蹴飛ばしながら進む。
『おい、そっちは風呂場だぞ。』
俺も友人の後を進みながら辺りを見回す。
光すら入らないこの洋館。
すごく不気味だ。
だけど、、なんか、前にもここ来たような、、
気のせいか?
『、、、なぁ、』
前を歩く友人が急に止まった。
『ぶっ、、おい、急に止まんなよ、、』
『お前、何でこの先が風呂場だってわかったんだ?』
実際、俺が風呂場だと断言したところは、風呂場だった。
驚きと共に、恐怖が襲う。
『、、、何で?』
もう一度友人が聞く。
俺は訳が分からず、ただ、何故?何で?をオウム返ししていた。
ガタタッ!!
突然の音に俺達は共に抱き合い悲鳴を上げる。
『な、何?!』
『2階から聞こえたけど、、』
俺達は今此処から逃げるか、2階を見るか、迷っている。
でも人間、好奇心ってもんには逆らえない。
俺達は階段を上がった。
ーー
キィ、、
軋む扉を開ければ、そこは子供の部屋らしく、小さなベッドとボロボロになったぬいぐるみが置いてあった。
『な、何もねえ、、ただの家鳴りか、、帰ろうぜ。』
少し震える声をして、友人は踵を返した。
俺も帰ろうとした。
『ぎゃあっ!』
突然友人が叫び、俺は尻餅をつく。
『何だよ?!』
友人が口をパクパクさせながら、前方を指差す。
指の方を恐る恐る見れば、そこには、、
青い小さな花を持った女の子が、頭から血を流したままそこに立っていた。
『ひいぃっ!!』
友人は腰を抜かしながら俺を置いて行った。
『ま、待てって!おい!!』
俺も腰が抜けたのか、立ち上がれない。
女の子は裸足のまま、ビリビリに破けたワンピースのまま、俺ににじり寄ってくる。
動けない俺の耳元に口を近づけて、カサカサした唇を開いた。
『やめて、やめて、、痛いよぉ。』
その声を聞いた途端、俺の脳内で薄れかけていた記憶がフラッシュバックした。
"君、見ちゃった?ね、誰にも言わないでね。そしたら、君だけ助けるから。"
"お前が!お前がいけないんだよ?俺じゃない。"
そうだった。俺は、、この子を殺してるんだ。
『思い出した?ずーっと、美優のこと忘れてたよね?美優、とっても悲しかった。殺したのは貴方なのに、、何で?』
目の部分が真っ黒な女の子が、俺を抱きしめる。
『これからは一緒だね?』
背中に女の子の指が食い込む。
この世のものとは思えないほどの強い力。
俺は首を絞められる感覚を感じながら、涙を流しながらひたすらに懺悔した。
女の子は、不気味な笑みで俺を冥界へ導いた。
『忘れないでね。次は。』
洋館の中から、不気味な女の子の声がこだました。
2/2/2024, 10:39:04 AM