吹き荒ぶ雪の中、彼は私が冷えないようにと抱きしめ、外套で包んでくれた。流れ落ちる血が暖かくて、苦しそうに呻く声が心を抉った。
それでも私を慰めようと頭を撫で、背中を擦ってくれた。大きくて、温かい手だった。
夜が更けて、彼の体が段々と冷たくなる。
彼は私の手に刀を握らせた。今は亡き彼の親友の遺品を、この刀の行く末を私にするというのだ。
「すまない、ドクター……この“降斬”を、貴女に託す」
将軍は咳き込み、吐き出された血が首筋に付いた。
「貴女の献身に、感謝する……そして、頼みがある。顔を、一目見せてほしい」
血を流し痛みに呻きながらも、彼は真っ直ぐに私を見つめた。マスクとフードを外せば、冷たい空気が肌を突き刺す。
「あぁ、なんと、美しい……」
手袋を外した手は、強く、硬く、武人の様で。頬に添えられた手に、自分のを重ねれば彼は微笑み返してくれた。
鼻先が擦れる距離だと気が付いたときには、唇を奪われていた。
「xxxxx、貴女を愛している」
私から唇を重ね、溢れた血を舐め取った。
「私もだよ。ありがとう、ヘラグ」
1/30/2024, 9:20:09 AM