明日への光
「ねえ、ずっと友達でいようね」
「急にどうしたん。心配しなくてもずっと一緒だよ。もし離れても、ずっと友達」
「、うん……」
こうやって、本当ではなくとも永遠を約束してくれるヤサシイ友達。“ずっと ”という言葉の重さを舐めてるとしか思えない。“ ずっと”だよ?それともこんな戯言を本当にしてくれるのかな。
私たちは大学生で中学校からずっと同じだった。大学は別々だけど一人暮らしをすることにして彼女のマンションの近くのアパートの1部屋を借りた。今日は私の引っ越しのお祝いとして、私の部屋で呑んでいた。ベランダで綺麗に見える月を見ながら私たちは酒でのぼせる頭を冷やしていた。
私はもうそろそろ寒くなってきたし、と部屋に入ろうとするその子の袖を掴んで可愛子ぶった。
「ねえ。さっきのそれ、『本当』にしてくれる?」
なんて言って、掴んだ袖の布地をきつく握りしめた。こんな試すような自分の行動の意地の悪さに、嫌気がさす。少しだけ触れる彼女の手首が夜風で冷えきって刺さるようだった。その行動に彼女は少したじろいだが、すぐに呆れたような顔で
「疑うのは勝手だけど、ソレを『本当』にできるかはうちらにかかってんじゃないの」
と言った。私は豆腐でもぶつけられた用な顔でぱっと手を離し言った。
「新しい解釈だわ。たしかにそうねー」
「お前はいっつもネガティブ思考すぎるんだよ」
「そんなにハッピーに生きれないもん」
「いま脳内お花畑つったか」
「そこまでは言ってない」
彼女は戻ろうとしていたのをやめてまた私の隣にきた。ポンポンと弾む会話にやはりとは思うが安堵と強い焦燥感が募る。どう表していいか分からないがなんていうか、そう。私は彼女に焦がれているのだろう。灯りに惹かれる虫のように。どこを切り取っても魅力的に映る彼女に対する気持ちは、春なのか、はてはただの友愛や独占欲なのか。
不意に彼女が私を覗き込み言葉を発する。
「ね、」
「なあに?」
彼女はこてと首を少し傾げ息を吐く。私は視線を自然に彼女に合わせる。
「お前のさそういうなんでも疑うとこ本当、めんどくさいけど好きだよ。」
好き。簡単に吐かれる好意に砂糖が溶けきらない紅茶を無理やり流し込まれたような気持ちになる。
「…私も好きだよ。ほんとに、ぜんぶ」
こうも簡単に向けられる好きが、気持ちの重さの違いを見せられているようで。嬉しいけどざらざらして少し居心地が悪い。
「あー信じてないな?…いいよ、『ずっと』が欲しけりゃ、私が毎日証明してあげる。ずっとが毎日続けば、それこそ終わりまで続けばそれは永遠だろ。」
言い終えて、私の手をスリと自分の頬に押し付ける。猫みたいで可愛い。じゃなくて、
「あのさもしかして、結構私の事すき?」
「は?そりゃあそうよ。」
「…んふふ」
「ちゃんとすきだから、だからそんな諦めたがってるみたいなことゆーなよ」
「…うん。ずっと一緒にしようね」
もう不安はなかった。変な劣等感も。あんなに悩んでたなんて嘘みたいで、それはただの杞憂だった。空を見上げると朝日が登り始めていてすこし空が明るくなっていた。また今日が始まる。この焦がれるような気持ちがどうであれ、友達でずっといられるならその正体なんてどうでもよかった。
12/15/2025, 11:49:29 AM