赤月

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いったいどれほどのものだろうか
眠れないほどの想いというやつは



充血した目で眼下に酷いクマを作った顔は見るに耐えない。
けれど相変わらず何事かを呟きながら思考する姿には頭が下がる。

「恋だな」

知らず口をついて出た言葉に、疲労もなんのその濁った瞳のまま不気味に笑って、

「ええ。絶望に悶え苦しんで死ぬ姿を大衆に晒す計画を練っている今が一番愛しいひとときですよ」

最悪の殺戮者として後世に名を残すことになるそいつの唯一の愛情表現が「殺人」であることを、この先どれだけの人間が理解してやれるだろう。

難しいことなのはわかっている。
だからせめて、今夜はゆっくり眠れるといい。何も考えることなく眠って欲しい。

そしていつか殺してくれる日を夢見て、今日も自分は眠りにつく。
眠る想いを口にせぬまま。


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12/5/2023, 3:41:49 PM