粉末

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「咲くのは一瞬かもしれない。けれど毎日姿を変えて健気に生きている。」

やさしく、愛おしそうに触れる。

「あなたは恋人にもそんな感じなの?」
「……は?!こ、恋人って…。」
動揺してる。ぎこちない動きでお花を愛でている姿が恋に恋をしている少女のようだった。
恋愛話だけでこんなかわいい反応をするなんて。
顔が良く見えないのが残念。りんご、いや桃みたいになっているのかな。
「ごめんなさい。嫌な思いをさせてしまいましたか?」
「いや、いやちがう…大丈夫だ。」
ええと、とか。ああ、いや、うーんとかひとりごとがお店の中にかすかに響く。なんてかわいいの。
「毎日違う姿を見せてくれるのは嬉しいですね。」
「あ、ああそう、です、ね…嬉しいし、面白い…あの、本当に…。花だけでなく、お客さんの顔とか反応も。ひとつひとつを大切に…。」
「そうですね。私もあなたとの一瞬を大切にしています。」
こう言うとそのお顔を私に向けてくれた。

「綺麗で力強くて健気でかわいい。
本当にあなたってお花みたいね。」

腰を抜かしてへたりこんだあなた。
甘く切ない時間。人生の中の一瞬の出来事。


刹那

4/29/2024, 5:24:05 AM