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一年前のきみは、
たぶんまだ知らなかった

靴ひもの結び方ひとつで、
冒険の行き先が変わることも
眠れない夜に数えた羊たちが、
じつは月へ帰る途中だったことも

駅前の時計塔では、
午前零時になるたび
古い燕尾服の時計屋が
こっそり未来を磨いている

「もうだめかもしれない」と呟いた声は、
ちゃんと星屑の切符になって、
一年後のきみへ届いていたんだよ

だから見てごらん

去年、泣きながら閉じた窓の外
今は風が、
金平糖みたいにきらきら鳴っている

失くしたと思っていた勇気は、
実はずっとコートの裏地に隠れていたらしい

転んだ日は、
地面の近くでしか咲かない花を見つける日
遠回りした道には、
近道にはいない猫たちが住んでいる

だから、急がなくていい

飛べない日は
ほうきの代わりにスキップで進めばいいし、
笑えない日は
ポケットにラムネを入れておけばいい

一年後のきみはきっと、
今日のことを
「はじまりの前の日だった」って
絵本みたいに話すから

5/9/2026, 4:15:18 AM